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古典の日絵巻第五巻 日々のなかの古典

古典の日絵巻第五巻 日々のなかの古典

法界寺阿弥陀堂内陣の壁画(重文)
「法界寺壁画写真集より」

第十二号 平成29年3月1日

京都と天女

 平安時代の初期、僧正遍昭(へんじょう)良岑宗貞(よしみねのむねさだ))が五節(ごせち)の舞姫をみて詠んだ「天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ」(古今集巻十七:雑上)は、百人一首の中でも人気の高い歌の一つだ。五節の舞姫たちを天女にたとえ、その美しい姿をもうすこし眺めていたいので天上に吹く風よ、天女が昇っていく道を雲で閉ざしてくれ、といった意味である。
 天女といえば、謡曲『羽衣』で知られる静岡県三保の松原の羽衣伝説が想起される。また滋賀県の余呉湖や、京丹後市峰山町の比治山(ひじやま)磯砂山(いさなごさん))のいただきにある池にも八人の天女が天降ったという。いずれも天女が水浴している間に、人間が羽衣を隠したために、天界に帰れなくなってしまうという話である。
 寺院が多い京都では、しばしば天女に出会う。堂内の壁画や天井画、欄間や光背の彫刻、梵鐘の浮き出し図など、様々な場所で妙なる音楽を奏で、散華し、霊香を漂わせている。西洋のエンジェルや、ギリシャ神話のイカロスには翼があるのに対し、日本各地の風土記などの伝承にみられる天女、仏堂や仏像を荘厳するこれらの天女は、雲に乗り、あるいは天衣を翻しながら虚空を舞う。
 毎年多くの観光客が見物する祇園祭綾傘鉾の綴錦「飛天図」の原図は、法界寺(京都市伏見区日野)の国宝阿弥陀堂内陣の壁に描かれている天女たちである。
 第五巻の最終号にあたり、毎回校正をお願いした京都産業大学日本文化研究所特別客員研究員の深澤光佐子さんと、写真撮影と全般的なアドバイスをいただいた都草理事長の小松香織さんに心より感謝申し上げる。

NPO法人京都観光文化を考える会・都草
特別顧問 坂本 孝志
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