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古典の日絵巻第六巻 能と源氏物語の世界

古典の日絵巻第六巻 日々のなかの古典

夕顔の舞姿

第二号 平成29年5月1日

「夕顔」(ゆうがお)
原作ストーリー

第一回でご紹介した「半蔀」とは打って変り、同じ題材でもここでは、荒れ果てた屋敷の薄気味悪さと物の怪に襲われて儚く息絶えてしまう夕顔の哀れな運命が描かれています。

宗家の語る見どころ

小書(こがき)に“山ノ端之出”と書かれていると、
山の端の心も知らで行く月は上の空にて影や絶えなん
の謡が鏡の間から聴こえ、この和歌が強調されるたいへんめずらしいお能です。前場では、夕顔が自らの死を予感し、物の怪に襲われた恐ろしさ、その心細さを長々と述懐します。「半蔀」は舞グセ、「夕顔」は()グセと言って語りを聞かせる場面が主となります。後場は、序の舞が中心で、最後に僧の弔いを受けた夕顔の霊が法の力によって救済され、成仏していく姿が描き出されます。

「半蔀」の明るく清楚な白のイメージから、「夕顔」では紫の色が入った装束へと変わり、女性的な情感を感じさせる「孫次郎(まごじろう)」の面は、源氏に出会った時の喜びから物の怪の恐ろしさにおののく心細く儚い夕顔を表現するのでしょう。

このようにお能の作品の中で同じ人物が異なったイメージで登場するのは、一つの演目では表現しきれない夕顔の奥深い人物像を能が再構成したといえます。

夕顔の舞姿

また、ここに登場する物の怪は、姿を現しはしませんが六条御息所と考えられています。原作の中では、「葵上」「女三ノ宮」「紫上」の巻で、六条御息所が物の怪となって登場します。これでは御息所は嫉妬深い嫌な女性に思われてしまいますが、皇太子妃として教養深い高貴な女性であったがゆえに冷静さを保つことができずにいる自分との葛藤が人間としての奥深さを表し、これほどまでに登場人物として取り上げられたのでしょう。お能の演目の中でも人気の高い「葵上」では、この六条御息所が生霊となり鬼となって、その姿を現します。

次回は「葵上」をご紹介いたします。

次  号
次号は平成29年6月に掲載します。
バックナンバー
古典の日絵巻〔第六巻:能と源氏物語の世界〕はこちら
古典の日絵巻〔第五巻:日々のなかの古典〕はこちら
古典の日絵巻〔第四巻:琳派400年〕はこちら
古典の日絵巻〔第三巻:新たなステージへ〕はこちら
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古典の日絵巻〔第ニ巻:制定をめざして〕はこちら
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